音楽って何だろう その2 音の強弱・大小
 前回はピッチのお話をしましたが、今回は音の強弱と大小のお話です。
 音の強弱と大小ってどう違うのかなあ???というところからお話します。
 まず、音の強弱(dynamicsと英語では言っています。)をコンピュータで表す時ヴェロシティー(velocity 速さ)という言葉を使っています。まさにその言葉通りでして、ピアノなどの鍵盤楽器は、鍵盤を押す速さ:息を吹き込んで音を出すトランペットやフルートなどの管楽器や、パイプオルガンの様にモーターで空気を(昔は“ふいご”でした)送って、大きな笛を鳴らしたりするような楽器では、息を吹く速さ(ちなみに人間の声もこの仲間です):ギターなど糸を弾く弦楽器では弾く速さ:同じ弦楽器でもヴィオリンの様に弓で糸を擦る楽器では擦る速さ(弓といっても擦るところは馬の尻尾を沢山集めて幅1センチぐらいの平らな面になっています。):ドラムなどの叩く打楽器は勿論叩く速さ、で音の強弱は決まります。因みに物理学の中に力学というのが有りますが、力というのは、加速度で表しています。すなわち変化する速さのことです。
 ということは、強い音を出したい時は、加速度の値が大きければ良いと言うことになりますね。強い音(大きい音って言う人も多いのですが正しくは強い音です。)を出そうと思って額に青筋立てて筋肉を目一杯使って、、、、なんて人を見かけますが、無駄なエネルギーを使ってますよね。演奏する変化する早さの度合い、要するに加速度の値が大きければ強い音が出るのです。私が尊敬してやまないピアニスト:フェビアン・レザ・パネさんは、綺麗なピアニシモ(弱い音)を出すので有名ですが、それ以上に綺麗なフォルテシモ(強い音)を出せます。そして彼の手や指を見ていると、どちらの音を出すときも殆ど同じ様な動きなのです。決してがんがん鍵盤を叩いたりしません。要するに加速度を上手に使っているのです。彼の様に音楽をよく知っていて、感性が豊かで、楽器の演奏も合理的にコントロール出来ている人は、世界中でもあまりお目にかっかたことはありません。私が彼の様な素晴らしい人と親しくさせてもらっているなんて、実はとんでもない光栄なことなんですね。感謝!感謝!
  教訓 その1
無駄な力みはやめましょう。ある目的を達成するのに必要な事をちゃんと理解していれば、変に力んだり悩んだりしません。生活でも同じですよね。人生も。
 教訓 その2
無駄な動きが無い人は、名人ですので、安心して信用しましょう。人と人とのお付き合いでも同じでしょう。
 次に音の大小(音量 volume)についてお話します。音量はステレオとかテレビのヴォリュームを想像すれば分かり易いと思います。ギンギンのロックでもヴォリュームを絞れば迫力は無くなりますし、小さな鈴の音でもヴォリュームを上げれば耳が痛いぐらいの音になります。もともと楽器(物質)には、これ以上大きな音は出ないと言う音量の限度が有るのですが、それは形と大きさと重さで決まります。同じ様な形で、それが良く解るのは、仏壇の鐘と、除夜の鐘でお馴染みのお寺の鐘との音量の違いでしょう。どんなに頑張っても仏壇の鐘は、お寺の鐘より大きな音は出ませんよね。でも、仏壇の鐘にメガホンの様な物を添えて鳴らしてみたり、大きなテーブルの上に直に置いて鳴らしてみたりすると、かなり大きな音になります。これは共鳴という現象です。一度実験してみると面白いですよ。相当音量に差が出ます。このことが、今有る楽器の形を決めて来ました。
 どういうことかと言いますと、昔、音楽は小人数に聞こえれば良かったのですが、時代が進むに従って多くの人に聴かせなければならなくなりました。王様や貴族が特権的に音楽を楽しんで、お抱えの音楽家に演奏させていた時代から、資本主義の社会になり、誰でもお金さえ払えば演奏を楽しめる様に変わってきたのです。当然、経済効率としては、一度に多くの人に演奏をきいてもらうのが良いわけで、それに伴って音量の大きな楽器が求められた訳です。それで、仏壇の鐘の実験の様な改良を施して現代の楽器が出来ています。勿論音量の事だけでは無く、演奏のし易さ、音色の美しさ、という面でも改良されていますが、一番求められたのは音量のことでした。一台の楽器で無理ならば沢山の同じ楽器に同じ演奏をさせて、共鳴を稼ぐことで音量を出せる様にもしました。オーケストラもブラスバンドもそうですよね。
 さらに20世紀に入ると電気的に音を増幅する事が始められ、今や何万人の人にでも聴かせられる音量を持てる様になりました。これは一面では機会均等と言うことで良いのかもしれませんが、逆に音量の小さな美しい楽器を、すぐ側で聴くという事が、非常に贅沢なものになってしまいました。それを楽しむには、一人一人の負担が大きい演奏会を開くか、演奏者に理解を求めてギャラの面で泣いてもらうか、自分で演奏して自分に聴かせるしかないということでしょう。残念な事ではありますが、経済効率の外側に実は良い音楽も沢山あります。そして、それが人の優しさとか慈しみに大きく関係している、というのは音楽以外のことでも、皆さん沢山経験していると思います。人の持つ優しさと慈しみは、相続税がないのですから、子供たちに、がんがん、どんどん、フルヴォリュームで残し伝えましょう。アメリカ合衆国をお手本にして来た日本も遂に息も絶え絶えの所に来てしまって、ハイパー資本主義と言うのは「一人勝ちのシステム」だと言うことが少しは気が付いたのかな?だって皆が儲かると言うのは「ネズミ講」でも証明された「大嘘」なんだから、富は貧困とプラスマイナスで授かる物なんです。エネルギー不変の法則です。自由とか民主主義が「富」をもたらすと言うのは大嘘ですよ。皆さん!

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