NO.1ヴァイブラフォン奏者・浜田 均初リーダー作品!
クラウドナイン・レーベル第一弾!
メロディーの宝庫、21世紀のニュー・スタンダードアルバム


「FOX DANCE/浜田 均」
  2001.8.25 発売 CLDN-0001 定価¥2,800(税込み)

 <曲目>
1. FOX DANCE(浜田 均)
2. GREEN CARPET(浜田 均)
3. TSURARA(浜田 均)
4. 亜麻色の髪の乙女(Claude Debussy)
5. 赤とんぼ〜アメージンググレース(山田耕筰 / アメリカ古謡)
6. 叱られて(弘田龍太郎)
7. 聖なる丘に天使が遊ぶ(浜田 均)
8. NEGUNAL(浜田 均)
9. 木箱(浜田 均)
10. 3 Oユclock nap(浜田 均)
11. SORACHI ・(浜田 均)
12. ALLEGRO CANTABILE(浜田 均)
13. TSURARA (ソロ・バージョン) (浜田 均)
<パーソネル>
♪浜田 均(ヴァイブラフォン)with ガネーシャントリオ・・・1〜3、8、12
フェビアン・レザ・パネ(ピアノ)吉野弘志(ベース)八尋知洋(パーカッション)
♪浜田 均&フェビアン・レザ・パネ Duo・・・・・・・・ 4〜7,9〜11 

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<本作品はこんな方に効用があります>
●最近リゲインを飲んだだけでは疲れがとれない方 ●胎教にモーツアルト以外で効果的な音楽はないのかとお悩みの方 ●最近、思いもよらず井上陽水のベスト盤を買ってしまった方 ●映画「ライフ・イズ・ビューティフル」を観て以来、すっかり涙腺が緩んでしまった方 ●近々、北海道に訪れる方 ●ふと気が付くとパソコンに向かって話しかけている方 ●自分を癒してくれるジャズ・レーベルはECMだけだと思っている方 ●内側からきれいになりたい方 ●最近の癒し系アルバムに満足いかない方 ●以上、何のことやらさっぱり分からない方
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“癒し”…だけでいいですか?

最近世間でヒーリングって言われて来ている部分は、翻訳すれば実はホーピング(希求すること)のニュアンスに近いのではないかと思い始めている。癒された、さてと、また歩き出さなければ…という小さな勇気なしには、ひとは先には進めない。
そこに気付いている感度のいいひとたちは、本だけではなく、映画、交友機会、そして音楽などに、この一歩踏み出すための小さな勇気を得るためのアンテナを様々な方法で張り巡らせていることと思う。そう、癒されるとプラス・マイナス・ゼロに戻るだけ。でも感性の扉を開けば、そこにはもっと豊かな世界があって、幸せのきざはしがあるかも知れない。前向きな気持ちを持てたら、それはその予兆。色々なことが煩雑になってきて、自分がちょっとだけ憂鬱モードに入っていたときに、僕はこのCDを手に取った。

僕らはいつから至福の「うた」を忘れたか

「 FOX DANCE 」は、本邦でも有数のヴァイブラフォン/マリンバ奏者である浜田均の初リーダー・アルバムであり、クラウドナイン・レーベルの記念すべき第一弾でもある。癒される?いやいや、ジャズ版チェンバーズ・ミュージックと言ってもよい凛とした品性があるこの作品から、むしろ強烈なアッパー・カットを喰い、俺も独りでたそがれている場合じゃあないと、あおられた気分がするほど、このアルバムに魅入られた。この作品は、聴くものにカタルシスを与え、前向きなパルスを送ってくれる。現在のジャズ・シーンにおいては、浜田均こそヴァイブラフォン/マリンバの第一人者という声も多い中、演奏の技術と相俟って浜田のメロディ・メーカーとしての資質がこれほどまでに高かったかということが証明されたアルバムである。

奏者としては昔から卓越していた。デル・マーレや竹竹(Take Dake)といったバンドでの活動、シンガー・中本マリのバックアップ、その他数々のライブの場において、浜田均がいる風景はたとえセットが変わっていてもどこか一歩先行く進取の気象があり、こちらは勝手に“知的な和製ゲイリー・バートン”をイメージしていた。どちらかというと、秀才イメージですね。ところが3曲目の「TSURARA」から7曲目「聖なる丘に天使が遊ぶ」までは、今までの浜田イメージを覆して、極めてウエットなれどもベタつかない、どこかに忘れ去ってしまった郷愁さえも誘う世界が構築されていた。僕が犬か狼ならとっくに遠吠えしている。どれがカバーでどれがオリジナルか、それさえも見まごうほど、流麗なメロディ・ラインが続く。これは多分、浜田自身さえも自己の内面のありったけをアルバムに封じ込めるという作業を経て、やっと体感できた世界ではないか。そこに初リーダー作という気負いはなく、気合いに変換してポジティブなエネルギーとして発散させてみせたところに、プロのプライドも垣間見える。これで、僕の浜田イメージは完全に覆ってしまった。アルバムの舞台は、表題作の「 FOX DANCE 」で明らかなようにキタキツネも跳ねる原野、北海道・富良野。一曲ごとに込めた想いは浜田自身の手になるライナーノーツに詳しいが、一聴してみれば粒選りの曲の美しさと演奏の洗練が醸し出すビジュアル空間が、聴き手自身で自由に自分だけの“富良野”の創っていいよというスペースを紡ぎ出す。映画を観たあとの感想が各人それぞれ異なるように、このアルバムは聴き終えたあとで(できることなら部屋を閉め切って、フル・ボリュームでよろしく!)未だ見ぬ理想境“富良野”をまるでホログラフのような立体的イメージで喚起させてくれるはずだ。本作はある意味、素直に何の衒いもなく“うた心の再構築”が展開されている。ジャンルやイディオムにあまりに固執しすぎて音楽本来が持っている純粋な浸透力や求心力を信じられなくなっているコア・ファンにとって、いつかどこかで聴いたような分かり易いメロディをふんだんに採用してゆく作曲、音楽のための音楽という狭義に追い込むことのない演奏形式の解放、たとえジャンルの壁があろうとも検証主義的によい題材選びを貫いている浜田の姿勢…これらはハードバップや4ビート=ジャズという幻想に対する、甘くも聖なる背信行為とさえ映る。なんでクラシックの「亜麻色の髪の乙女」、「赤とんぼ」と「アメージンググレース」が同一線上で語られるのか、ドビッシー、山田耕筰、アメリカの古謡…聴き手がジャズという視点にこだわればこだわるほど、このアルバムの核心からはズレていく。ゆっくりした時間軸のなかで鍛練を積んだメンバーたちの音が成熟して、どっしりとした包容力で支えられるなか、浜田がフロントで“うた”を繋ぎ出す、その過程そのものが実はこの作品における“ジャズ“であると俯瞰(ふかん)できたときには、アルバム全部を聴き終えている。こうした贅沢な聴き方を、昔はみんなやっていた。僕らはいつからこんな至福の瞬間(とき)を放棄してしまったのだろう。

ジャズのコア・ファンにとって、それは甘美な背信行為。

演奏にフォーカスしてみる。浜田 均はどちらかというと、マリンバのような打面離れのよい溌剌とした楽器の方が似合うひとだと思っていた。備長炭まで楽器にしてしまうひとである。パーカッシブな味わいというものを確実に持っていたひとだ。ところがここでは、ヴァイブラフォンのリヴァーヴのウエットな味わいが心地よい印象を残す。広いレンジの収拾が録音的には難所ではあるが、アルバムの全体のコンセプトからは、これが大正解。ピアノの旋律と堂々タメを張って、これほど深みと印象的なフレーズを確信的に音楽へ張り巡らせることができるひとを僕は他に知らない。

ピアノが話題に上ったところで紹介するが、フェビアン・レザ・パネのタッチのしなやかさこそは、アルバム作りの根幹のところでかなり大きな貢献をしていると思う。時には浜田のメロディに静かに寄り添い、時にはテンションを強めに絡んでくる。その演奏はまるで清楚な少女の無垢な表情から、性悪女の官能性まで演じ分ける魔性の女を見るかのよう。浜田の意図を十分に咀嚼して、そうでなければならないという選択肢を提示してみせる。ガネ−シャントリオで展開している顔とはまた違った表情の下に、ここまでの本性が潜んでいたかと思うと、このひとの演奏からはまだまだ何か出てくるような可能性が感じられる。

加えて、ベース奏者の吉野弘志とパーカッションの八尋知洋にも一杯喰った。例えば、吉野は現代音楽の領域にまで踏み込んだ才人。そのひとが、ある意味、牧歌的でアンニュイなベース・ラインを嬉々として提供していたりする。ずっとベースのソロだけでも聴いていたい気分になる。八尋も元々活動範囲の広いひとだけれど、ピットインでビールの小瓶を注文して粘っていたタイプの僕にすれば、やはり山下洋輔、板橋文夫ら“切れ味爽快、シック・ウルトラ”的な存在といつもつるんで、凄まじい演奏をやっていたひとというイメージが今でも鮮烈に残っている。スタートからトップギアに突っ込んでも、何の問題もなくフルで疾走できるレーシング・ドライバーが、本作では外車のスポーツ・クーペで趣味のいい走りを披露している、そんなイメージを想像して戴ければお分かりいただけるだろうか。
ここでは派手なプレゼンスは避けて、注意深く全体を見守り、ぐっと抑制した演奏で独特のたたずまいを演出している。じゃあ、存在感が希薄なのかといえば、その逆。ドラムレスということが全く気にならないテンションを全体に与えているし、後半の「ALLEGRO CANTABILE」くらいになると、八尋の本性の一端が浮き彫りになってくる。
この4人、さすがはプロだ。その一言でおしまいなのかも知れないが、コアのファンにとっては口をぽかんと開けてしまいそうなある種の反則を、こうも確信的かつ効果的にやられてしまうと、何かとひとこと多い僕のようなジャズ・ファンでも、あとはこの作品と出会えたことを素直に喜ぶ他はない。
僕はいくつか決意したことがある。夏はサザンの「TSUNAMI」、冬はこのアルバムに入っている「TSURARA」を自分のテーマ曲にすること。ジャズのビギナーに「何から最初に聴いたらいい?」って聞かれたら、ビル・エヴァンスはやめてこのアルバムをそっと薦めてあげること。そして、何よりも大切な愛するひとと一緒に聴くこと。あなたは誰とこのアルバムを聴きますか?
                 
                 ジェイク森(グッド・ミュージック煽動家)
                            2001年6月





           
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