音楽って何だろう その28

 やっと、一日目の恵比寿ガーデンプレースでの演奏が終わってホッとする間もなく次の日も演奏が待っています。この日は参加者が少なく、応援の人達もその日に限って一番少ない日でした。しかも天気も悪くて寒い風が吹いていました。子供達も心細いのか、普段何ともないところでミスしたりで、演奏は良く有りませんでしたが、やはり暖かいお客さんに励まされた格好で無事終える事が出来ました。音楽を仕事でやっている私でも、心理的に追い込められたりするとこういうことは有ります。本当に人間って不思議ですよね。何かをやるときの成否は、心理状態が7割、日頃の積み重ねが2割、天分が1割という風に思います。

 このイベントで最高に素晴らしい事が有ったのは次の週です。余りに嬉しかったので、その時期のE音会ニュースの号外でも書きましたが、その部分を書き出してみます。

 『お客さんの中で「このグループは学校か何かですか?」「いいえ、品川区のとある団地の地域のサークルです」「アーーーーそうですか。素敵ですね。そう言うのって良いですよね。」と感激していました。このお客さんは、ズーーットニコニコしながら演奏を聴いていてくれて、演奏が良かったので私に聞いたようです。それで、地域のサークルでここ迄良い演奏が出来ると言う事に驚きと感動を覚えたようです。こういう事があると、アア、やっていて良かったなあ!と思いますよね。』

 と言う物でした。今でもこの事を思い出すとE音会をやっていて良かったなあ、としみじみしてしまいます。親睦が第一義のサークルが、演奏も良い物が出来て、お客さんがそれに感動して、その実体を知ってさらに感激してくださって、何ともサークル冥利に尽きようというものではないですか!

 この時中学2年生で、今高校生になっている子達も「恵比寿でまたやりたい」と、ことあるごとに言います。勿論ロケーションが素敵、お客さんが沢山、と言う事も有るでしょうが、外のイベントで演奏して、聴衆の方からこの様な感想を頂けた経験もその理由の一つになっていると思います。子供達も大人のボランティアの方達も、無機的な見方をすれば、時間を無駄に使って居るかに見えるサークル活動ですが、この様な評価をしてくださる方がいらっしゃると言うことで、又一つ続けていく励みが出来ます。

 さて、順調にステージをこなして、いよいよ最終日を迎えました。全日程雨にもたたられず、そして最終日は人手も反応もことのほか盛り上がって最後のステージを終えたとき、皆一つの事をやり遂げた達成感とお客さんに喜んで貰えた満足感で一杯でした。一日4回ですから、3回次のステージまでの待ち時間が有って、しかもそれが四日間あったもですから、子供達は学校・学年を越えて親睦を持てた様です。特に中学生は、芸大のお姉さん達と色々お話できて、大変刺激を受けたようです。控え室でちょっとした打ち上げをさせてもらったのですが、皆その喜びを表していました。多くのステージを経験する事で、E音会の目指していた、色んな人、色んな地域との交流と言うことが一つ達成されました。全員心地良い疲れが体を包んでいる感じです。

 そして、打ち上げの席で、次の年の大きな取り組みの発表も出来ました。以前から、富良野の人達が「フラニスト音楽クラブ」を作って、ハンドベルクラブや市民オーケストラ(ブラスバンド)の活動をしていたのですが、私が「いつか交流を持ちたい」と言っていたのが、この時期ににわかに具体化したのです。10月下旬から話が始まって、丁度この時期に「夏休み前にやろうじゃないか」という決定が出たのです。流石に決定は出たものの、金銭的な事、果たして何人参加出来るか、等々未だ山積みの問題が沢山ありました。でも、恵比寿のステージが大成功に終わって、皆の気持ちに勢いが有るのか、「行きたい!行きたい!」の空気が占めてしまいました。私は、北海道まで行かなくてはならないし、もう少し消極的な反応になるかなと思っていましたので、少し当惑しましたが「よし!皆の為に一肌脱ごう!」と元気づけられました。

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