音楽って何だろう その25

 夏休みが明けてE音会の練習が再開されました。前回書いた様に色んな発表の機会を与えられそうな割には、E音会の子供達が気の抜けた状態になったのが気がかりでした。でも、当面の目標、地域センターフェスティバルに向けて少しずつ子供達も練習に戻ってきて、「止めようかな」と思っていた子も復帰して又ワイワイとにぎやかなE音会に戻りました。
 そして、なんと、なんと、恵比寿ガーデンプレースでの演奏の話が決まったのです。夏休み中に障害者の為のコンサートを経験して、もっと色んな人に聴いてもらって交流を持とうと思って居たのですが、それは来年までお預けになりました。兎に角、お話としては、12月の土曜日曜の内の四日間で、1日4回ステージ、そして、何と子供達のユニフォームを作って下さる、との事でした。これは嬉しかったです。ユニフォームというのは、有るに越したことはないのですが、個人負担となると、それぞれデザインの好みがあって、作りたい人作りたくない人が居て、、、、、等々考えると、なかなか皆の意見を集約していくのは大変なものです。こういう機会に作って下さると言うのが、もめなくて一番良いのです。そんな良い条件の発表の機会を頂いて、E音会の皆さんも一層練習に熱が入りました。
 でも、一つ大変な事に気が付いたのです。ステージは野外の特設ステージで、日によっては12月ということで木枯らしが吹く日もあるとのことです。風が吹くとベルの音はかき消されて仕舞います。一つのパートを複数の人で担当してもらって音に厚みを出さないと、お客さんに聞こえない、という状態になってしまいます。増して、全部の日に参加出来ない子供達も居ることが解りました。これは、流石にE音会のメンバーだけでは持たないと判断しました。直ぐ頭に浮かんだのが、E音会「きゅりあん」コンサートでお世話になった森岡さんの事でした。例によって芸大の学生に声を掛けてもらい、なんと、今度は延べで8人の人達が参加してくれることになりました。又又、心強い応援をしてもらえる事になりました。
 そして、葉祥明さんの鎌倉の美術館での演奏の話も具体化して、E音会としては今までに経験したことのないスケジュールとロケーションで、発表の機会を持つことになってしまいました。嬉しい事では有りますが、本当にこれで良いのかな、と何回も自問しました。たかだか始まって2年くらいのサークルには過分なお話に思えましたし、又「燃え尽き症候群」を起こされたら困ってしまうな、とも思いました。でも、私が若いときに良く言われた言葉「チャンスの尻尾を掴み損ねると、二度と巡って来ない」を思い出して、ここは一つ掛けてみようと思いました。晴れやかな場所で、多くの人に見られて(どんな人がいるか解らない)演奏することだって、子供達の「井の中の蛙」精神の解消になると思いました。何回か言って居ますが、E音会(団地)の子供達は、八潮団地の中だけで生活出来ますので、本当に「世間知らず」の子が多いのです。私が言うのも何ですが、、、
 大きな目標が出来て、練習にも熱が入り、直ぐに11月の下旬になってしまいました。いよいよ北鎌倉の葉祥明美術館まで子供達と出かけなければなりません。E音会としては、初めての「遠征」です。遠征と言っても、電車で40分ぐらいですから、どうと言うことが無いと言えるかもしれませんが、何しろ、年齢層が小学3年から中学2年まで、時間にしっかりした子とそうじゃない子、忘れ物をしないか、事故がないか、等々考えると大きな心配事でした。しかし、このあたりから、E音会はスタッフも凄いぞ、と言うことが解って来ます。子供の引率ならお手の物の保母さん、保険関係の会社にお勤めのお母さんの障害保険の加入の便宜、上は中2下は保育園と、年齢の離れた子供達のお母さんの手慣れた遠足準備マニュアル、音大生の現場の設営における手際良さ。何とも素晴らしい動きに、私は驚くばかりでした。しかも、この日は、アメリカでインディアンサマーと言う季節が有りますが、将にそう言う天気で、風も無く晴れ渡りポカポカして、庭で演奏するには最高の日和になりました。私たちが設営を始めると「何時からやるんですか」と尋ねる人が沢山いて、美術館の庭は始まる前から最高の雰囲気に包まれました。
 

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