音楽って何だろう その23
 

 さて、E音会「きゅりあん」コンサートの当日を迎えて、昨年の経験から、スタッフは実にスムーズな動きでした。そして、当事者が思わぬ以上に良い話が沢山出てきたのです。
 先ず、以前にも私のアイデアと言うことで、組曲「富良野」をやるからには、富良野の風景をスライドで映しながら演奏したい、という事をちらっと書きましたが、それが実現したのです。
 スライド上映を、オフィスフラノの社長の小田嶋さんが許可してくださって、選りすぐった富良野の風景のスライドフイルムを貸してくださいまして、何と当日ご本人がスライド係を買って出てくださいました。勿論富良野から来てくださったのです。しかも、新しい富良野のCD「Holy Hill」がこの日までに製品が間に合って、もっとしかも、曲に絵を付けてくださった、葉祥明さんがコンサートに来てくださると言う情報まで入ったのです。これには皆色めきだちました。何しろ、私が思っている以上に、葉祥明さんのファンが多くて、皆わくわくして準備をしました。おまけに、小田嶋さんのお姉さんが経営している(この時は東大和でやっていました)花屋さんから、大きな花が届くは、ステージにはラベンダーの小鉢が沢山並べられるは(これは清水まにさんのアイデアらしいです)、で、すっかりホールは富良野になってしまいました。これぞ、手作りコンサートならではの演出です。
 昨年の反省から、先ずは小屋付きのスタッフへのご挨拶。子供達も声を揃えて「宜しくお願いします。」の大合唱。ゲネプロも順調に進んで、楽屋の中はともかく、子供達も目立ってはしゃいでヒンシュクをかう様な事も無く、パネさんも藤本さんもご機嫌よく関わってくれて、いよいよ本番が始まりました。
最初の東仁美さんの挨拶も昨年同様実に素晴らしく、一部の組曲「富良野」の演奏も良いし、初回にしてはスライドの上映も旨くいき、全て順調に進みます。ほのかに薫るラベンダーが心穏やかにしてくれます。考えてみれば、ラベンダーは精神安定作用のあるハーブでした。こういうコンサートにはうってつけの花なのかもしれません。
 さて、後で知ったのですが、パネさんは、本番前々日にやったベルとのリハーサルの後「あんなに似たような曲ばかり並べては退屈するよね」と漏らしたそうです。それは勿論その通りで、ベルの絡んだ曲を並べて見ると、かなり似通った曲想が多かったのですが、ベルの為のリハーサルですから仕方ないのです。パネさんに本番の曲順を知らせていなかったので、そう思われたのでしょう。ベルの演奏者の次の曲の準備の為に、ベルの入らない違う曲想の曲を間に挟んでいましたので、私は、本番では違うよと思って、パネさんの言葉はそれほど気にしませんでした。案の上その心配は無かったどころか、終演後、何とそれ以上に嬉しい言葉がパネさんから返って来たのです。「いやー気持ち良かった。こんなコンサートは始めてだよ。退屈するんじゃないかと思って居たけど、全然そんなことなくて、僕の所から風景のスライドがよく見えて、ラベンダーの香りがして、凄くリラックス出来たよ。良かった良かった!」と言って下さいました。これは嬉しかったです。
 そして、なんと言ってもこのコンサートの圧巻は、コンサートに来て下さった、葉祥明さんが、私の紹介に応じてステージに上がってお話して下さってくれたばかりか、一部の組曲「富良野」の最後の曲に合わせて、詩の朗読をして下さったのです。流石にジャンルは違っても芸術家ですから、まるで綿密にリハーサルを積んだかのような間の取り方で、奇跡的な演奏になりました。しかも背景には葉祥明さんの書いた富良野の風景の絵が映し出されているのです。芸術の三位一体とは将にこの事なんでしょう。(言い過ぎ???)子供達も練習を積んだ甲斐が有って、良い感じで演奏してくれて、私もパネさん同様、こんなにやっていて嬉しくて嬉しくてというコンサートは初めてでした。人が感動する事にかなり時間を割いて「音楽って何だろう」を書いて来ましたが、関わっている本人が感動しながらその場に居たコンサートは初めてでした。

次へ

ホームページへ