音楽って何だろう その12

 ユ97年11月29日パナソニックマルチメディアセンターのホールでのE音会自主コンサートの話です。
 このコンサートは、ほぼ1年掛かりで実現出来たものでした。E音会でハンドベルに取り組みを始めた当初より、パナソニックの建物がハンドベルの演奏に適している(高層ビルなのに最上階まで吹き抜けになっていて、ヨーロッパの大きな教会に似ている。)と思っていた私は、東仁美さん、清水まにさんに相談してみました。「もう、絶対あそこで、やりたい!!!」という懇願に近いものでした。そうすると、なんと清水さんが「連絡を取れると」と言うではないですか。早速コンタクトを取って頂いて、ユ97年の初頭に担当の方とお話する事ができました。E音会の主旨、経緯、活動、に情熱のスパイスをふりかけて、この場所でしかハンドベルは活きない事を、プレゼンテーションしました。私は自分の仕事でも、あれほど熱心なプレゼンテーションをした事が有りません。その熱意が通じたのか、その場でOKの返事を頂けました。どうせなら、クリスマスの時期にと言う事でも話がまとまりました。まあ、一番賛同頂けたのは、地域の子供達と活動して行くと言うE音会の主旨と、地域住民と企業の協調と言う事の一致があっての事だと思います。いずれにしても私達は、余りにも立派な発表の場を得て興奮しました。
 ところが、紆余曲折。この言葉通りの展開になります。
 なんとなく、「担当の人だってサラリーマンだから移動も考えられるよね」と雑談の中で言っていたのですが、なんと、その年の4月その通りになってしまったのです。これはかなりあわてました。新しい担当の人に又一からプレゼンテーションして、それが受け入れられるのか?前回は熱意が通じたが今回はどうなのか?何しろ歴史の浅い団体なので、信用されるのか?等々、前任の方へのプレゼンテーションではあまり心配しなかった事を、2回目の方が多く感じてしまいました。そりゃそうなんです。前回では当たって砕けろの気持ちでいましたが、いざOKの返事をもらってしまうと、それを守りたいという気持ちが出てしまいますからね。本当に「困ったな、、、、」と思いました。
 そうは言っても、ほったらかしにして置くのが一番悪い選択ですから、もう一度新しい担当の方とお会いする事にしました。
 新任の方は、最初の挨拶の時の印象では、やはりこちらに「どういうい人達なんだろう」という眼差しを向けている様に感じました。勿論こちらの気持ちの問題でそう思ったのかもしれません。私は少し緊張しました。そして、やっぱり駄目かな、と思いました。
 ところが、本題の話になって直ぐに「前任者からその事は引く継いでます。もう少し詳しい事をお聞かせ下さい。」とおっしゃったのです。これは、全面的にOKを頂けた訳では無いにしろ、前向きには考えて下さっているな、と思って少しホッとしました。早速こちらの要望をお話しました。それに対して
1、 吹き抜けの部分を使う為には、日曜日でしかも全社上げてのイベントでないと、無理である。今の所年に一回ニューヨークのアマチュアオーケストラの為にしかそれは行っていない。しかも、スタッフを日曜出勤させるのは困る。土曜日の昼の時間帯でホールを使うのはどうか。
2、そのかわり、ホールはマルチメディアの設備が整っているので、自由に使って良い。
3、子供達が設備をいたずらしない様に管理して欲しい。
4、これは、特別な配慮なので、1回限りだと思って欲しい。特に、地域に開放していると思われるのは、困る。
 と言うものでした。どれも、全くその通りだと思いました。私達は当然この条件を受け入れました。只、私は、どうしても吹き抜けで音を出してみたかったので、短い時間で良いので、何とか演奏させて欲しい事だけお願いしました。それは、折れて下さって、お客さんをお迎えする時だけ演奏しても良い事になりました。これで、全て私達の願いが叶いました。本当に安心しました。
 しかも、その日ホールの中と設備も見せて頂いて、大変親切にして頂きました。身に余る扱いに、大変感謝して、是非とも良いコンサートにして、御恩に応えるしかないと思いました。
 その後、舞台は整っても、実際今の様に、大人、中学生、小学生がそろったクラブになったのは6月のことでしたから、発表の場が先行した形で事が進んだ感は否めません。とは、言うものの早速準備が始まりました。
 先ずは、ハンドベルだけの演奏よりも何か他の楽器と共演するほうが良いと思っていたので、E音会の活動に賛同してくれそうな音楽家を探すことから、準備が始まりました。これは、翌年「きゅりあん」の小ホールをE音会のコンサートとしてハンドベルクラブの出演を前提に1年前の6月に(この年の6月)に予約を取っている、という事も踏まえたものでした。かねてから、素晴らしい音楽家と子供達が共演することで、聞くだけでは解らない何かを感じ取って欲しいと思っていたので、パナソニックのホールでのコンサートで先ずそれを実践しようと思いました。
 思い付いたのは、クリスマスコンサートを八潮で演って下さっていた、フェビアン・レザ・パネさんでした。でも彼はグランドピアノ以外では演奏しません。そして、パナソニックにはピアノが有りませんので、「きゅりあん」のコンサートまで待たざるを得ませんでした。
 もう一人、私がヴァイブラフォンとマリンバのユニットを実験的にやっていたのですが、その相方の、藤本隆文さんに打診してみました。E音会の主旨に賛同してくださって、子供達に音楽の楽しさ、素晴らしさを伝えられる人となると、誰でもと言う訳には行きませんので、私の知り合いの音楽家の中では彼は最良の人でした。彼は、海外のコンクールで入賞する程の(コンクールの事は以前批判しましたが、それはそれとして、彼の力量の程を判断する要素としてです)クラシック界で嘱望された人なのに、ジャズも大好きで、音楽をこよなく愛し、偏見の無い、実に良い奴なんです。欠点はオーケストラに所属している為に、忙しいという事ぐらいです。そして、快諾してくれました。続く

次へ              ホームページへ