アメリカツアー面白話 27
 前回の話からの続きですが、「理想」を追い求めている多くのアメリカ人は、民主的な手続きで起きてしまう矛盾に悩まされています。私などはそこで「ああ、自分ひとりが幾ら頑張って何かをやっても世の中なんて変わりゃしないよ」と思ってあきらめてしまう方ですが、アメリカ人の多くの人は、できるだけ賛同者を集めて「理想」を実現しよう、という行動をめげずにやり続けます。この精神的強さは賞賛にあたいします。その背景には、民主主義的な行動から社会が良い変化をしていく体験を沢山していることが大きく影響していると思います。あらゆる差別をなくしていく行動。犯罪を減少させる町の取り組み。教育環境整備への広範な取り組み。等々アメリカ的な良い変化(民主主義的前進)は見習うべき物が沢山あると思います。
 さて、Connecticut州StamfordのUConnと言う大学(恐らくUniversity of Connecticutの略だと思います。)でのコンサートを最後に東海岸とはお別れして、西海岸に大移動です。楽器はプロの運送屋さんに託して運んで貰い、私たちはレンタカーを空港近くまで運んで返却してやっと飛行機に乗れます。10時55分発の飛行機にLaGuardia空港から乗るために「余裕を持って」Stamfordを6時に出発しました。ところがところが、ここからも更に珍道中が始まります。相当心臓に悪い珍道中でした。
 勿論空港までの渋滞を予想して出来るだけNew York Cityに近付かないルートで行く計画を立てて出発して順調に進んでいたら、なんと予定していた橋がトラックは通行禁止だと言うのが途中で判明したのです。違う高速道路に乗り換えるのに30分近く浪費してしまい、一同少しあわてましたが余裕を持っての出発だったので未だ心配の範囲では有りませんでした。ところが違う高速道路に乗るために下の一般道を走っていて看板を見ていると「Bronx」という文字がやたらに目に付くし、町は汚いし黒人とヒスパニック系の人しかいないし、これは相当ヤバイ地域を通行しているのでは!とそちらの方が心配になってきました。何しろ、ちょっと前までは「Harlem」地区が犯罪多発地帯で一人歩きは危険とされていたのに、町の努力で安全な地域になりました。そのかわり現在はHarlemより北西に位置する「The Bronx」が相当危険な地域になっていて、それはますます酷くなっている、と言う情報を聞いていたのです。ヒスパニック系の違法移民が大勢そこに集まるようになって、英語は通じないし、車で信号待ちをしていても危険だと言う話もでていました。そんなこんなで私はかなり不安に駆られていたら、事も有ろうにケニーさんがガソリンスタンドに入って行くではないですか!「ええ!そんな!ここでガソリン入れないと駄目なの?」と思いましたら、案の定というか何というか、私たち車が給油機のところで止まったらなんと何十人というヒスパニック系の人たちに囲まれてしまったのです。運転していた若いスタッフも外に出られずに皆で固まっていました。兎に角アメリカのガソリンスタンドは自分で給油しないといけないので、ガソリンも入れられません。どうするのだろう、と思って固まっていたら、ケニーさんは何にも気にする様子もなく集まってきた人たちをかき分けて給油しながら私たちに「どうしたの?入れないの?」と聞いてきます。「!?!?!?!?!」     続く

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