アメリカツアー面白話 23

 Schenectadyという町の寂れた話をしましたが、そんな寂れた町でも「ケセラセラ」的なおばさんが居て気持ちを明るくしてくれます。ちょっとした出来事です。
 コンサートの次の日がオフだったので(相変わらずケニーさんは和太鼓のクリニックをしていますが)日本人2人と日本人と白人のハーフのアメリカ人とで遅いランチを食べられるレストランをうろうろ探していたら、適度なアメリカに良くあるレストランが見つかって入りました。相変わらず面倒な注文はアメリカ人の仲間に頼んで、オフなのでビールを飲みながら3人は日本語で冗談を言いながら食事を待っていました。オフという気楽さと昼間のビールの所為で誰かが何か一言言うと直ぐに3人で笑うという感じでした。ちょっと周りに迷惑ではありましたが、案外アメリカのレストランでは愉快に騒々しいのは大目に見てくれるので久々の開放感に楽しく浸っていました。私たちのテーブル担当のウェイトレスは典型的な映画に良く出てくる様な小太りで気さくな中年女で、テーブルにくるたびに何か一言うち解けた事を言ってはにっこりして去っていくという調子でしたが、そのうちテーブルにくるたびに私たちの会話に興味をもっているように話しかけてくる量が増えてきました。どうやらこいつらは英語が分かるのに、3人では訳の分からない言語で会話していて、しかも大笑いしているから怪しいぞ、と思ったようです。ハーフの彼が言うには「あのおばさんは自分の事を笑っているのかもしれないと思って警戒しているのかもしれない」とのことですが、それならばとなるべくおばさんを見ないようにして楽しい馬鹿話を続けていました。そのうち今度は私をねらってペラペラと質問してきたので「I don’t understand what you say. I’m Just Japanese.」と言うと、「OH ! I’m Just Polish」などとと言って譲りません。どうやら「おまえは日本人なら私はポーランド人だ。そんなの関係ないから、何がそんなに楽しく愉快な話なのか教えろ。(私にもそれをわけてくれ)」と言うことらしいのです。そしておばさんは思わせぶりなウィンクをしたと思ったら大笑いして又行ってしまいました。こちらもつられて大笑いです。こんな笑いのウィルスは後ろの席にも伝染してしまい、なんと若い人たちのグループも楽しそうになってきて、この若者のグループは実はUnion Collegeの学生で、放送部の学生で、昨日のコンサートのことを知っていて、なんて連鎖が始まってしまって、ついには連中のビデオカメラで取材までされて日本人の恥を大いにさらしてきた次第です。あの取材した内容は大学の放送局で放送されたと思うと今でもぞっとしますが、それ以上にポーランド人のおばさんは実は大阪のおばさんとあまり変わらないという思い出が強烈に残っています。とは言っても彼女の先祖が移民として(もしかしたらナチスから逃げてきたのかも)アメリカに渡ってきた頃は大変貧乏で苦労もしただろうし、今でもレストランでウェイトレスをしているくらいだからお金持ちになれたわけでもないし、GEの撤退のおかげで栄えていた町も寂れていく一方だし、恐らくあのおばさんにとって良いことはそんなに無いはずなのに、楽しそうな所には興味を示して自分も楽しくなっちゃえ根性が凄くて、くよくよしている暇があったら大笑いしている方が良い、なんて事は実は素晴らしいことなのだと今でも思い出すのです。最高! 続く

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