アメリカツアー面白話 22

 Schenectadyという町のUnion Collegeの多目的ホール(多目的ドームと言った方が正確)は素晴らしいものでした。Nott Memorial Hallというドーム型の円形の建物ですが、国からの補助金で運営されているくらい重要な建物のようです。円形の4〜5階建てくらいの高さの吹き抜けになったドームで、各階の壁は展示するギャラリーとしてちょうど良い作りになっていて、最上階から丸く歩いて展示物を見ながら降りてくる方式になっています。そして一階は何も置いてなくていつでもパーティーやコンサートが出来るようになっています。もちろん教会のような吹き抜けのドームですから音の響きは素晴らしく前回の大学といい今回の大学といい「ウラヤマシイ!!」と思ってしまいました。そして何より面白かったのは、そのときの2階以上のギャラリーでの展示は、なんと中国の「文化大革命」(私が高校生のときに始まった中国の「狂気の大衆化」とでもいうべき現象です。何人もの善良な人が「紅衛兵」という集団に迫害を受けたり虐殺されたりしました。)のポスターや、記事や色々な資料が展示されていました。おそらく40年たった記念ということだったのだと思います。音響チェックとリハーサルの空き時間にぐるっと見ましたが、懐かしいのと人類の愚かしさに改めて思い巡らされました。昔から皇帝ネロ、秦の始皇帝、チンギスハーンなどの独裁者による虐待、虐殺はあったものの、20世紀に特徴的なのは大量虐殺が大衆のある種のヒステリーに支えられている、ということです。スターリンの粛清、ヒットラーのホロコースト、毛沢東の「文化大革命」、ポルポト派の知識人大量虐殺等々は1次的には独裁者の狂気が発端であるにしても、表面的には民主的だったり大衆の圧倒的な支持があったりで、それに反対したり間違いを指摘するほうがその体制の中では少数派だったりするわけです。この「狂気」は日本も潜り抜けてきています。昭和の軍国主義の歴史は国会の民主的な手続きを踏んでいるように見えて、実はテロと「特高」の恐怖警察に支えられたインチキな手続きなのに大衆は「狂気」を選択してついには共同体の崩壊まで行ってしまった、などとつらつら考えさせられました。おっと、アメリカだって大衆のヒステリーから起こした事柄は沢山あります。案外今だって相当ヤバイですよね。だから歴史的に何処の「国」も美しい国家などありません!
 さてさて、この町はもうひとつ興味深い有様を見せてくれました。町に入ったとき、昔栄えていて、今は寂れているのかな、という印象が直感的に浮かびました。感じの良い商店街があるのに店が開いていなかったり、本当は人々でにぎわっているのがふさわしい町並みに人が居なかったり、車の通行量から考えて道が立派すぎたり、明らかに寂れ始めている感じです。まるで日本の「格差」問題がアメリカに移ってきたようです。さすがに英語でそんな込み入ったことは質問できないので、アメリカ人の仲間に色々聞いてもらったら、やはり思ったとおりで「GE」General Electric社(アメリカの松下電器のような大きな電気関係企業)の工場がこの町に有って大層栄えた町だったのに何年か前撤退してしまってこういう状態になった、ということでした。日本でもそうですが、大きな企業が町を発展させ多くの人が幸せな時間を過ごすときは最高ですが、このようなことがあると人々も町も良いときの何倍もの痛手をこうむるようです。 続く

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