アメリカツアー面白話 13
 University of MarylandのDekelboum Concert Hallでのコンサートに関わった舞台芸術学科の先生や学生達の姿を紹介します。
 このコンサートはもちろん有料ですし、学内向けでは無い一般に公開されるコンサートですから、ちゃんとコンサートして成立しないと駄目なのは大原則で、しかし大学のホールと言うことで、全ての運営を先生と学生が行うと言うことになっているようです。だから先生はピリピリしています。ひたすら動き回って、自ら全ての行程に目を光らせています。そして常に学生達に何かしら指示を出しています。学生達はと言うと、日本でもそうですが、だらだらした印象です。日本に居るときにどうして若者はだらだらした印象を与えるのか不思議に思っていたのですがアメリカの学生も全く同じ印象を受けたので、そうかこれはアメリカ的な若者が増えている所為なのだと思い至りました。そして面白いのは、きびきびしているな、と思えるのは少数の女の子です。それだってほんの一握りです。自分の楽器を組み立てながら、どうしてだらだらしているように見えるのかを観察していると、あることに気がつきました。先生は全体の進行状況を見ながら、その都度指示を出しているので、早く終わった所と未だ作業している所でばらつきが出てきます。そのとき、きびきびした印象の子は作業が終わった旨を先生に言って次の作業の指示を受けて又作業に入りますが、だらだらした印象の子達は作業が終わったら次の指示が先生から来るまでだべったり、ふざけたりしているのです。しかも体がでかいので目に入ってきます。中には大きな声で冗談を言ってげらげらと笑ったりしています。それこそ「目に余る」と言うことなのです。よく「社会は一握りの優良な人たちが動かしている」と言う人がいますが、あながち間違いでは無いでしょう。と言うのも次のPhiladelphia(フィラデルフィア)での公演は普通の劇場に外部の舞台制作会社が入ってのコンサートでしたが、音響、照明、舞台設営の各作業に一人か二人が担当しててきぱきとこなしあっという間に準備が出来ました。この大学では授業の一貫という意味合いがあるにしても、プロ集団の5倍の人数で作業しているのに3倍は時間が掛かっていますから、いかに「少数精鋭」じゃないと商売として成り立たないか分かります。また余談ですがNHKで録音に行きますと、楽器を転がしてくるのに二人がかりで作業していた、と言うような時期がありました。公務員も似たような作業をすることが多いと思います。やはり「商売として成り立たない」方法しか採れないところは「世間」と乖離していると言われても仕方が無いのです。それはプロと学生との対比と同じだからです。
 さてもう一点先生の厳格な態度にも驚かされました。舞台では各部署の仕事に手を出しては絶対行けないのです。椅子一つ欲しいときでも舞台道具に頼むし、マイクの位置がちょっと動いても勝手に直してはいけないのです。そして、最終的には舞台監督の指示に従うのが舞台での序列関係になります。ただし舞台監督は出演者に最大限に良い表現をして貰うために色々気を遣ってくれます。ただし「しきたり」を犯すと怖い存在でもあります。        続く

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