アメリカツアー面白話 8

 アメリカ本土(Main Land)の最初の演奏はグリーンズボロ(Greensboro)の大学主催のAsian Arts Festivalでのコンサートです。会場は大学の中のホールですが、大学の自治という考え方がちゃんと浸透しているアメリカではホールも卒業生が管理運営していることが多いです。しかもその大学では小柄な女の子(失礼)が堂々と仕事をしているので、そういう姿は見ていて清々しいものだし嬉しくなります。Alice Sharpeさんと言う方で、卒業したばかりでホールの管理運営を任されているとのことでした。当然収益を上げるためにある施設では無いので、殆ど一人でやっていて、何か催し物をやるときは学生のボランティアを募って運営しているらしいです。とは言っても搬入(私たちは「仕込み」と言ってます)の時や、ステージ設営の時は、当然学生達は授業中ですから一人になってしまいます。「仕込み」しながら何気なく見ていると、彼女一人でも、音響の人たち等に実にうまいことお手伝いをお願いして切り抜けているのです。アメリカ社会は気軽に手助けを頼めて気軽に助けてくれる社会ですから当たり前なのかもしれませんが、彼女は実にそれを自然にやって準備を着々と進めます。その反面一般的なアメリカのステージに関わる事では、ここから先は私たちの持ち分で、ここか先は誰それの持ち分だから、一切手出ししなかったり、させなかったりというのも厳しく守られています。やたらに親切だな、と思うときがあれば、すごく厳格なのだな、と思うときもあって、何処で切り替えているのか私なんかはちょっと戸惑ってしまいます。間違いかもしれませんが、恐らく報酬が有る無しが関係しているのかもしれません。報酬がある仕事は責任もあるので厳格にやっていて(後で問題が起きたときの責任の所在?)、報酬が無い仕事は大らかなのかな、と思えます。「ボランティア」と言う発想や仕組みを発達させた国ならではの行動様式なのかもしれません。この後アメリカ各地に行ってコンサートをやってみて所謂「裏方」さん達の働きぶりはいろいろ興味を引かれる事が多かったのでこれからも少しずつ書いていこうと思います。
 とにかく彼女はコンサートに向けててきぱきと動いてちゃくちゃくと準備を進め、コンサートが終わった後も学生達に指示を出して撤収して、「ふむふむ」と感服して見ていました。本土に入った最初のコンサートも成功裏に終わり、心地よい疲労感に包まれていると、ケニーさんから恐ろしいお達しがありました。「明日は昼のコンサートで午前11時に着かなくてはなりません。調べてみたらここを朝5時に出発しないと間に合いそうもないです。宜しくお願いします。」という話を夜の12時近くに聞かされました。私物を片付けたりしていたら、4時間も寝られるかな?という感じです。前の日は飛行機でしか睡眠を取られなかったので久しぶりに「ハードなツアー」になりそうで若い頃を思いだしてちょっと懐かしくなりました。さてその次の目的地はウエストヴァージニア(West Virginia)州のノーフォーク(Norfolk)というところです。これからずっとそうですが、地図でみると近く感じるのにゆうに500kmはあることになります。恐るべしアメリカです。まあ天気の良い寒い冬が続いているのでドライブには最適です。 続く。

戻る

次sへ

ホームページへ