アメリカツアー面白話 4

 ケニーさんは日本に来てまずは「諏訪太鼓」に入門(長野県の寒さにはびっくりしたそうです)その後「助六太鼓」に参加、後半は林栄哲さんや渡辺香津美さんらとセッションをするくらいソリストとしても名を上げたようです。その傍ら和太鼓以外でも日本の伝統楽器の鼓(つづみ)お囃子、笛、獅子舞、等々の修行もしていたそうです。なにしろ根が真面目ですから、貪欲に日本の伝統音楽を吸収するべく修行したのは想像に難くないと思います。(腕が上がったので歌舞伎の舞台で演奏させてもらえたこともあったようです。)そして彼のルーツである「日本」に対する思い入れがそのような「修行」に向かわせたのだと思います。アメリカの日系の方たち、特に3世、4世の若い人たちは、日本語はたまにおじいちゃんやおばあちゃんと話すときに使う程度で、毎日英語の生活で習慣も身分も全くのアメリカ人として暮らしています。その分逆に「純日本的なもの」に対する憧れの気持ちは非常に強く、独特な「日本ブーム」があるようです。それは、アメリカにおいて長い間アジア系ゆえの独特の差別や偏見にさらされて来た歴史があって、初期の日系人はそれに負けないように自分たちの「土台」になるものを必死に守りながらアメリカ社会に溶け込む努力をして自分たちの善良さを働きかけ、そのおかげで少しずつ環境も改善されてアメリカ人として生活できるようになってきていて、今や100%アメリカ人として育った3、4世世代は、今度は逆に自分たちの「土台」となるもの知ることで、それを誇りにしたいと思っているのかもしれません。動機は違っていても、世代を超えて共通の「土台」になるものを大切にすることで自分のよって立つところを鮮明にしたい、それを誇りにしたい、という思いが強いのには驚きました。同じ年代の日本の若者たちと比べると、文化や伝統を敬う真摯な態度、慎みをもった態度、何事にも真剣に真面目に取り組む姿勢が非常に目につきました。今の日本の子供たちの、頭のいい子は「金儲け」頭の悪い子は「刹那に走る」中間の子は「見てみないフリ」という様に蔓延している空気感は「相当ヤバイ」と思います。そうじゃない子を埋没させて目立たなくしている大人の世界も「もっとヤバイ」と思います。まあどちらかというと大人の空気感が子供に伝播しているというべきでしょう。「人と違ったことをして嫌な目に遭いたくない」「正論を言って浮いてしまうのが怖い」「きれいごとを言っていてもしょうがないよ」的な空気感が蔓延している今の日本はちょっと目を覚ます時期に来ていると思いました。
 さて、ケニーさんは日本での修行や演奏活動を10年で終えて、なんとロスアンジェルスには帰らずに日本からまっすぐハワイに向かってそこに居を構えたのです。長男のマイルス君が今17歳か18歳なので日本で誕生しているはずですので、子供を養う必要もあるでしょうから和太鼓を仕事として成立させるためにはハワイが良かったのかもしれません。今全米でケニー遠藤はどんなことでも挑戦して和太鼓の世界を広げていることから、相当有名になっているそうです。でもその取掛かりがハワイだったのは決していい条件だったとはいえません。ハワイはリゾートの島ですから。ただ日本人の文化や風習は多くの日本人に支えられているのは確かです。続く

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